訃報

 昨年12月の日本人間関係学会第30回記念全国大会において、メディエーション講演「対立から対話へ~紛争解決の新手法~」をご担当頂きました津田尚廣先生(一般社団法人ピアメディエーション学会専務理事)<以下に、当日の案内文を掲載致します。>が、令和5年4月4日に急逝されましたので、謹んでお知らせ致します。
 津田先生の「一般社団法人 ピアメディエーション学会」とは令和2(2020)年から他学会との連携と交流推進の一環として、「連携団体」の割引特典などを含めた相互交流を行ってきましたが、これも津田尚廣先生のご尽力によるものでした。
 津田先生は、1915年に始まる「弁護士法人なにわ橋法律事務所 」代表社員であり、また他にも特定非営利活動法人シヴィル・プロネット関西代表理事などの多くの社会貢献事業を展開してこられました。教育・学校現場でのトラブル解決に生徒が、また職場においては同僚が間に入り解決にする手法としてのピアメディエーションは、いじめへのそして平和な社会と学校建設への力になるとのお考えから、ピアメディエーション取組の意味についての考察と提言を重ねてこられました。
 先生の余りにも早いご逝去は、各界にとって大きな痛手となりますが、茲に先生のご遺徳を偲び、ご功労に敬意を表しますとともに感謝の気持ちを込めまして心からご冥福をお祈り申し上げます。

合掌 

「和4(2023)年12月3日11:00~

メディエーション講演:

     「対立から対話へ 紛争解決の新手法」     

津田尚廣(一般社団法人ピアメディエーション学会専務理事)

1 メディエーションは、欧米において、第3者が間に入る場合の新しい紛争解決手法として、発展普及してきた。対立関係にある紛争当事者間の失われた対話関係を復活・促進し,話合いによる徹底した自己決定に基づき、両当事者が満足する解決をめざすのがメディエーションである。
 とりわけ、欧米では、教育現場において、メディエーションの1類型であるピアメディエーションが、紛争を暴力ではなく対話によって解決しようとする平和教育の一環として発展してきた。ここにいうピアメディエーションとは、学校現場の場合、生徒間のトラブルを教師ではなく生徒が間に入いり、メディエーションの手法を駆使して解決することを意味する。同様に職場においては、職場の仲間である同僚が間に入り解決することになる。
2 そこで、教育現場については、日本におけるピアメディエーションの最先端事例である大阪府立茨田高等学校での実践を通じて、その教育的意味と効果及び必要性を明らかにする。すなわち、ピアメディエーションを取り組むことにより、生徒だけでなく教職員を含むすべての学校関係者が、コミュニケーション能力を高め、対話によってトラブルを解決する方法を学ぶことになる。今日、これはいじめと立ち向う有力な手法になりうると考えられている。さらに重要なのは、ピアメディエーションは、生徒が問題の解決者として社会(学校)のルールを設定し(ルールの再構築)、平和な社会(学校)を建設できる能力を育成することにある。
3 職場については、メンタルヘルスの観点から、ピアメディエーションを導入している最新の企業のモデルケースを紹介する。具体的には、当該企業において、2年間のピアメディエーションプログラムを立ち上げ、①企業総体のコミュニケーション能力の向上を図り、②充実した職場環境の確立、企業文化を創造し、③サステナブルな人材育成システムを構築せんとするものである。かかる具体例を通じて、企業におけるピアメディエーション取組の意味について考察する。」