ごあいさつ
日本人間関係学会について
日本人間関係学会 理事長
早坂 三郎
本学会は、人類の進化と進歩の大きな要因の一つである「人間関係」について学術的そして学際的に研究し、会員相互並びに社会との交流を図っていこうとする学術団体であります。その学会を構成する会員の関心及び研究分野は、当然ながら多分野・広領域で、教育、心理、看護・保健・健康科学、保育、福祉、生活科学、情報科学、社会学、法学、哲学・倫理・宗教、文学、芸術そして人間科学など多方面に亘っており、また研究者のみならず多様な実務に従事している方々に活動いただいております。まさに、現代及びこれからの社会構造と同じ様に、異なる研究分野並びに実践領域の研究者と社会人による対人相互作用を以て、よりよき人間関係の構築と展開についての研鑽を積もうとする日本人間関係学会の役割と機能は、AI化社会到来が必至とされている今後においても、その重要性は益々高まってくると考えられます。
本学会は平成5(1993)年11月の全国大会を以て創設されましたが、その2年ほど前から設立者にして初代会長の茨木俊夫先生のもと、当時の準備委員が丁寧な組織づくりに邁進され、学会設立のためのいわばプレ研究会の開催を重ねての誕生でした。ですから産声を上げたときには、豊かで優しい人間関係が醸成されていました。まさしく本学会の特色となる素地がこの時に創られたと考えます。そして、本学会は人間関係に関心をもたれている全ての人に門戸を開き、共に歩んでいこうとする基本姿勢は不易です。
さて人間関係は、つまるところコミュニケーションであると考えられます。コミュニケーションとは、言葉を交わすだけではありませんし、様々な手段と種類があります。例えば、「目は口ほどのものを言い」とはよく聴く言葉ですが、いわゆるノンバーバルコミュニケーションを含め、その内容の発信と受容は単純ではありません。また、リアルな対人関係の機会が乏しくなってきている現代にあっては人間関係が苦手だとか煩わしいという人が増えてきている傾向にあります。しかし、人類進化の途を振り返れば我々の祖先が群れを大きくするに伴い、意思の疎通を図るコミュニケーションをより豊かにそしてより複雑にして来たことは、卵と鶏の関係に喩えられましょう。コミュニケーションと人間関係の展開により集団はやがて大規模化しましたが、並行して脳の構造と機能に影響を与えた一因ともなりました。その意味でも、これからのAI化とか超スマート社会にあっては人間関係のみならず人工知能を備えたポストヒューマンとのインターリレーションについても研究・考察する時代がついそこまで来ているということでありしょう。 つきましては、本学会創設者の茨木俊夫先生の学会設立の理念のもと、これまで学会が積み重ねてきた基盤の上に、研究と交流の場を会員の皆さんと共に構築して更に積み重ね、併せて社会貢献を図ると共に世の負託にも応えてまいりたいと存じますので、何卒、旧に倍しますご支援とご協力を偏に願い上げます。
従って一層、本学会の存在と活動は希求されるところであり、ために会員各位の努力と自己実現により学会として社会的要請に対応していかなければならないと、改めて身の引き締まる思いでありますが、それは何も難しいことではありません。私は最近、「ありがとう」という言葉に敏感になっています。「有ることが難しい」存在である我々人間が、お互いのための利他的行動により社会が営まれ発展していけるので、これに資することが、「ありがとう」につながり、幸せをもたらせることになると考えます。この人間関係への考察と配慮を、学会のみならず会員の活躍の場で展開され実践と研究に反映し、研究会や研修会を通して研鑽と活動を一層深めてまいりたいと存じます。
つきましては、本学会の発展と向上のため会員各位の倍旧のご協力、そして関係の皆様や団体のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
令和2(2020)年3月22日